第3話:「GWホームラン対決の詳細」①

今年のゴールデンウイークは“椎間板ヘルニア”の後遺症の神経痛が、右腰から

右の外太もも、左の足首周囲に連日顔を出して結構痛めつけられた。

そこへ、前立腺がん治療の為の、第一回ホルモン注射を打たれた。

男性ホルモンをカットし、女性ホルモンを入れられると聞いていた為、

一番の頼りのパワーが削がれるのではと心配になった。

それで、注射当日は安静にしておけと言われたのだが、病院の帰りにメテオドームに

寄ってフルスイングで一ゲーム打ってみた。

別にパワーダウンはしていない感じで安心したのだった。

ところが、翌朝下腹がひどく痛むので見てみてビックリ、

腹の端から端まで 7cm 幅で手の厚さくらいに腫れあがっていた為に慌てて病院に直行。

医師は、“こんなひどい副作用は初めて見た”と言ってあきれた顔をしていた。

手の打ちようは無いと言われ、腫れと痛みは二週間以上続いた。

そんな状態での今年のGWホームラン対決だから、痛みとの戦いも熾烈を極めた。

もちろんのことながら、挑戦者たちには全力で戦ってもらう為にガンのことも、

神経痛のことも何も教えてはいないのだ。

一ゲームの四分間をガマンすればいいのだから。

初日は名古屋からの刺客だった。

昨年が初対決だったが私が勝ったので、今年は二泊三日の泊まり込みでやって来て、徹底的に打ち込んでからの挑戦だった。

六番打席の 120km/h での戦いだ。

リベンジしたさに気持ちがはやっている感じで、先攻をとった。

練習では三本とか四本打ったと言っていたが、明らかに力んでいて、なかなか芯でとらえることが出来ず、ようやく一本打てた。

先攻の相手が一本くらいだと、後攻は気が楽だ。

私は半分も打たないうちに二本打てたので、足腰や注射の副作用のことを考えてあとは六分目の力で流して打った。

二日目は東京の対決常連の N さんのライバルだという人が初挑戦して来られた。

やはり、二日間泊まり込みでの挑戦で、強打者の N さんのライバルだと言うだけあって、かなりなスラッガーだった。

彼の希望で自分は五番打席に入り、私は六番打席に入って、お互いに120km/h を打つというやり方なのだ。

この対決は相手より先に打ち込んで優位に立ちたいと思う為に、力みが出る前半が大事なのだ。

案の定二人とも力みと焦りで前半は凡打の応酬だった。

半ば過ぎてようやく当たったと思ったら、なんと二人同時のホームランだった。

すると、また二人とも焦る為に凡打の連続となって、ついに最終球となった。

気合の充実した私が詰まったのをホームランゾーンに押し込んだかたちで、ようやくケリをつけることが出来た。

この日二人目は地元のスラッガーが相手だったが、私に先攻をとらせた。

逆転されたくないので、4 本は打ち込みたいと気合いを入れたが、 3 本しか打てなかった。

ただ、大きなホームランが一本あったので、コレが彼にはプレッシャーになりはしないかと思った。

すると、まさにこの一本のイメージが強かったらしく、大振りが目立ってなかなか芯でとらえることが出来なかった。

まるで自分のスイングが出来ないままで、とうとう一本も打てずに終わった。

体の状態は最悪な感じなのに、打席に立つと不思議に力感あふれるスイングが出来ていた二日目だった。

「このテのホームランは、相手にとって大きなプレッシャーになることが多くて、私の大きな武器の一つとなっている」

鹿児島のイチロー

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