第97話:「退院後にリベンジマッチをせねばならない」

入院前の若者達との最後のホームランを行ったのだが、ガンに罹って以来、気力を振り絞って

戦っていた為に一度も負けたことは無かったのだが、ついに最後の最後に負けてしまった。

となると、退院後は可能な限り早い機会に“リベンジマッチ”ということになる。

長い入院生活では素振りのトレーニングも出来ないし、体の鍛え方も僅かしか出来ないので

筋肉は痩せ細るし、一番大切なスイングパワーも無くなるものと思われる。

我がバッティングセンター人生では最大の問題だ。

敗戦によって、“いかに素振りが大切か”ということを思い知らされたので、バットの持ち込みは禁止

されているのだが、追い出されることを覚悟のうえで“1500gバット”をこっそり持ち込むことに決めた。

病院では本気の素振りはやるつもりはない。

スイングの中の手首を返す瞬間のトレーニングをするだけだ。

これには重たいバットを握ってやらねばならないのだ。

前立腺ガンが治ったとしてもホームランを打てなくなった人生なんて生きる意味を見出せないのだ。

ホームラン打つ為なら、追い出されてガンが悪化して死んでも構わない。

なぜなら

私のホームランを喜んでくれる人たちがいっぱい居る。

人から尊敬の目で見られることくらい嬉しいことは無いのだ。

これらすべてが私の生き甲斐なのだ。

生き甲斐がなければ、私は生きていけないのだ。

したがって今はホームランを打てることこそが、まさに私の最大の生き甲斐なのだから。

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