第65話:鹿児島のイチローの回想録56「メテオドーム剛力マシン設置当時の想い出 1 」

五年ほど前にメテオドームに全く新しいタイプの“剛力マシン”が導入された。

最高速は “130km/h” だった。

目が人並み以下なので、“130km/h”での若者達への敵役はもう務まらないだろうと、

内心は覚悟を決めていた。

しかし、気がついてみると、集中力と気力を武器にして若者達の中でも

トップランクに位置していた。

そして、早くもリーダーシップを発揮して、いっちょ前にお手本で打って見せたりして

煽りまくっていた。

連日の厳しい素振り鍛錬が確実に実を結んでいるという疾患があった。 

78歳にして“130km/hの剛速球型マシン”とめぐり合ったことで、

私の挑戦者魂と反骨精神に火がついて打法にも進化が現れてきたのだった。

まず、年々老化に負けて弱くなる一方だった、“左ひざの突っ張り返し”が

黄色の矢印で示したようにしっかりと突っ張り返せるようになった。

威力のある剛速球を弾き返す一番の功労者だ。

インステップ(黒の矢印)しても、130km/h の球速に差し込まれることのない鋭さにも

磨きがかかっている。

白の矢印の“右ひじのさばき方”と、“グリップのだし方”が従来から備えていたのだが、

コレがキレ良くなった。

ただ、まだ私には重大な欠点がある。

赤色の二つの矢印だ。

本来ならば赤い矢印の“右のかかと”をもっと矢印の方向に回して、

“右腰”を赤い矢印の方向に力強くねじ込まなければいけないのだ。 

写真で見る通り、この赤色の下半身の力を使って打っていない。

上半身主導で打っていて、一番大事な下半身は、ただ単に上半身に

引きずられて廻っているだけなのだ。 

年々少しづつだが老化の為にスタンス幅は狭くせざるを得なくなっている。

それでいて、若者達相手のホームラン対決では高い勝率を上げている。 

あと何年生きるか判らない歳で若者達相手に強い敵役が務まるなどとは

思ってもみなかった。

この点は実に気分爽快だった。

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