第50話:鹿児島のイチローの回想録㊷「持病で苦しんでいても約束のホームランを打たねばならないのだ」

私は長年慢性の腸の持病に悩まされていて、激しい下痢が始まると一か月から長い時は二か月くらい苦しめられるのだ。

皮肉なことに、こんな時によくテレビの収録と重なるのだ。

しかし、収録の日時が決まっていると、“持病の下痢が始まりましたので延期して下さい”とは言えないのだ。

過去にこの持病と収録が重なって難儀したのは三回ある。

大リーグのイチロー選手が“大リーク 3 千本安打”の記録を打ち立てた時と、“引退した時”の二回と、“マツコの月曜から夜ふかし”の収録の時だ。

いずれも下腹に力が入らずに困ったのだったが、イチロー選手の方のテレビには “三本の祝砲” としてのホームランを求められるし、“月曜”の方も記録保持者として写される為に、意地ででも複数本のホームランを打たねばならないのだ。

だから、紙オムツを履いて臨んでいた。

“月曜から夜ふかし”の時のは不細工な写真が残っている。

オムツで尻の周りは膨らんでいるし、漏れないようにと気にしているので、見事なへっぴり腰だ。

そして体を大きく捻らくてすむように、極端なオープンスタンスで打っている。

こんな不細工な打ち方でも、当時の旧型マシンでは新記録となる 8 本のホームランを打って、ディレクターの人から感謝の言葉をもらったのだった。

イチロー選手の引退の時は、その日の夜遅くに電話が掛かって来て、“イチロー選手が今日引退したので、明日はご苦労様をねぎらう為の祝砲を三本打って下さい”というリクエストだった。

この時はかねてよりもひどい下痢状態だったのだが、最新式の薄型の紙おむつを使っていたので、撮影スタッフの人達に気づかれずにすんだ。

三本を打って責任を果たせたので、残りの球は思い切り振った。

すると、上段に飛び込む快心の一撃となったのだった。

もうコレを最後にテレビから“祝砲を三本打って下さい“と言われる心配が無いということなので、心の底からホツとした。

なぜかというと、イチロー選手が現役だと、次々に新たな記録を達成されるので、その度にいずれかのテレビ局から“祝砲を三本打って下さい”と言って来られるので、常に心のどこかに大きな緊張感が宿っていたからだ。

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