第9話:鹿児島のイチローの回顧録② 「生来の運動オンチので何も出来ない、資質も無い老人が…」

子供の時から駆けっこはいつもビリ、鉄棒、跳び箱なども全てダメで、

そのまま大きくなったので、何らの運動、スポーツに関心が無いままで 62 歳まで過ごして来た。

生涯掛けた仕事は自動車の実験研究で、その結果や提言は 36 年間にわたって、「月刊・自動車工学」誌に

書き続けて来た。

糖尿病の治療の一環としてバッティングセンター通いを始めた 62 歳の時に書いていた「自動車工学誌」と、

その記事の一つが以下の写真だ。

休刊になるまでの 36 年間を、一貫して燃費に関して担当を任されていた。

バッティングに関しては完全な素人なので多くの野球青年達が、

文字通り手取り足取りしてバッティングというものを指導してくれた。

根が素直な性格なので、彼らのいう事を良く聞いて実行して行った。

また実験研究が本職なので、教わった事を、“なぜなのか”、とか、“もっといい方法は無いのか”という姿勢

なので、指導してくれる青年達が驚くほどに私の上達は早かった。

三年目には独走態勢をとれるほどの完全なホームラン王になっていた。

当然の事かも知れないが老人が若者達のトップに立っているということで、良くテレビにも出されるようになった。

その当時の“日の出の勢い”の顔(左側・18年前)と、現在の若者達との数えきれないほどの戦いをやるようになって十余年、

“最強の悪役”をはれるまでになっている顔(右側)を、テレビの画面を拝借して並べてみる。

現在の方は左側の頃とは比べ物にならないほどの“条件の厳しいメテオドーム”で若者達が諦めるほどの

「130km/h で 7 本のホームラン」という記録をたたき出して、なおかつ、いまだにほとんどの対決相手を

力任せにつぶしまくっている為に、昔と同じように優しそうではあるが、もはや敬遠されるようなっている顔なのだ。

(次回へ続く)

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