第9３話：「逃げられない　奇想天外な激励の仕方」

現在ホルモン療法だけで前立腺ガンと闘っているのだが、これだけではガンを

根治させられないので、放射線療法を施されることになった。

放射線と聞いただけでビビッているのだが、実際にその治療を受けた人が、こっちが

聴きもしないのにアレヤコレヤと教えて來る。

その度に延期を申し述べて逃げて来た。

三度逃げた。

周りから“もう逃げてはダメ、男らしく腹を決めてガンと闘いなさい、

そして奇跡の復活を遂げなさい”の声が大きくなって、仕方なく闘うことにした。

東京の元仕事仲間が入院前の私の様子を見がてらに励ましに来てくれた。

四ゲーム打って、ホームランを二本打って元気なところを見せて

安心してもらった。

折角なので鹿児島の観光地をいくつか案内した。

その中で、私は五十年ぶりとなる“曽木の滝”に行った。

台風が過ぎてまだ日が浅かったお陰で、物凄い水量で迫力ある景色を見ることが出来た。

締めくくりに元気を出すようにと大好きな“うなぎ”をご馳走して下さった。

そして驚いたことに、“必ずガンとの闘いに勝って、奇跡の復活ホームランを打つ

ということを間違いなくする為に“、と通常の何倍もの“全快祝い”を下さった。

入院する前に“全快祝い”なんて聞いたことが無いが、そうなると、もう、

逃げも隠れも出来ず、絶対に闘う以外に道は無いということだ。

責任重大だ。

…